夜ご飯デート
店内に入り、魚料理を注文する。お料理はどれも普通においしかった。けど、案外普通だね…と、浩司は言った。
私は、何でも美味しく頂ける方だし、何より、浩司にご馳走して貰ってて、文句も言えない…。
だけど、せっかく私が美味しく食べてるのに、不満げに食べられると、気分が萎える…。
彼は、そんな私の様子には、全く気付く様子もなく、私の顔をジーっと見つめ、何を考えているのか分からない、独特の表情をしている。
「何で、ずっと見てるの?」私が聞くと、「なんで?駄目なの?」と言ってくる。
うーん…どう言ったらいいんだろう…
付き合い始めて、3か月ほどになるが、私は多分、彼のこと、ちゃんとした、恋愛対象としては見てないんだと思う。
結構、イラっとする事の方が多いし、結構、傲慢なところがあったり、結構、人を馬鹿にするような発言するし、結構、上から目線だし…。
あれ…?私、好きじゃないじゃんっ!
そもそも私、傲慢な人って元々好きじゃなくて…自分に自信満々な人とか世の中には沢山いると思うけど、それを自慢げにいうんじゃなくて、笑いに変えて面白おかしく話したり、ある程度の謙虚さを保ちつつも、自信に満ち溢れているとか、そういう人ならいいのよ。
だけど、浩司は、露骨に自慢してくるし、自分がいかにすごい人間かを淡々と話したりしてくるので、正直うんざりしていたのも事実。
申し訳ないけど、私が生きてきた世界は、それなりに、すごい人がたくさんいたので、別に浩司が特別すごいわけじゃないと思うのよね。
いい年して、自分がいかにすごいかアピールをしてくる男性って…正直、痛い。と、私は思ってしまっていたの。
という事は、やっぱり、浩司は、私にとって『都合のいい男』だったのかなー。
すごく好きな人に対しては、そんな風に思わないもんね、きっと。
会いたいときに会えて、美味しいもの食べたいときに、ご馳走して貰って、構って欲しい時に、構って貰う。
家も近ければ、それは、より叶いやすい。暇なのが嫌いな私にとって、LINEをすれば、返信が来て、電話したいと言えば、電話が来て…という、この関係が、心地よいのだ。
かといって、彼の一言一言には、イラっとすることも多いので、絶対に本気になることはないと思う。
レイナのことを愛している風かつ、レイナのことを想ってる風なのに、ちょいちょいイラつかせる天才だった。
それでも、浩司は、会えば会うほどレイナのことを、強く想うようになっていった。
危険な男
会えば会うほど、私のことを、強く思うようになっている浩司。
ただ普通に好きでいてくれているだけなら、何も問題はなかったんだけど…
どうやら私のFacebookやInstagramをチェックし、私の行動を、監視しているようだった。
「昨日のパスタは美味しかった?」
「昨日は出かけてたんだね。楽しかった?」
そんなセリフを毎日のように言ってくる。会ったときにそれを言われた時の浩司の目は、一切、笑っていなかった。
この男、ちょっと危険…!!
そう感じた私は、彼に、ヤキモチを妬かせる前に、きちんと彼のフォローをすると決めた。
彼とはマメにLINEし、会える時は、少しでも会う。
正直、家が近くなければ、できないこと。
ちょっと顔を見せるだけで、浩司は、安心した。
でも浩司は、一歩間違えれば、ストーカーになりえる人だと思う。
でも、社会的地位もあるし、家庭もある人なので、きっと、そこまではしない。
でも、先日、私は、彼の本心を聞いてしまった…。
「レイナを僕だけの女にしたい…」突然の浩司の発言に、私は、耳を疑い、思わず、聞き返した。
「えっ?どういう意味?」私が聞くと、彼は、恥ずかしそうに、もじもじしながら、
「いつか、僕の奥さんにしたいってことだよ」と、言った。
「それが叶う頃には、私死んでるよ…笑」と、動揺を隠しながら、かわす。それぞれ結婚している、私たち。お互いに離婚する気はない。夢を言葉にするのは、自由だからね。あーーそんな気持ちだったんだ…。やっぱりね…と、何となく、想像できたものの、ちょっとだけ、ぞわぞわっとしちゃったことは、このブログの中だけの、ナイショの話。
やっぱり、浩司は気を付けないといけない。想いが強すぎて、こっちの気も考えずに、突っ走ってしまいそうな気がする。こうと決めたら、どんどんそれに向かって、突き進んじゃう傾向がある気がする。それは、男女の関係においては、とてもバランスがとりにくくなるんだよね。
どちらかの気持ちが大きいと、相手は、それを『重たい』と、思ってしまう。それって、つまり、『負担』だということ。相手に負担をかけるような、人に言えない恋愛は、しちゃダメだと思う。
前に、本命彼の健太郎が言ってたけど「2人の気持ちが同じ重さだから、心地いいし、幸せが平等なんだよ」って、本当にその通りだと思う。
ま、実際に、私の気持ちは健太郎に、向いちゃってるから、もしかしたら、そういうのが、伝わっちゃってて、不安にさせてるのかもなー。それは、私の自業自得なので、今後、浩司との付き合いは、慎重にすることにして、そろそろ、浩司の話を終わらせようと思う…。
今の私、それどころじゃないっ!!
実は、本命彼氏の健太郎との間に、不穏な空気が…漂っていた…!!