亮真さんの弱音
席に座って、しばらくは、亡くなったお父さんのこととは、全く何の関係もない話をしてたの。
だけど、突然、亮真さん、「子孫が欲しい」って言いだした。
はいっ?
そこは普通、「子供が欲しい」っていうところじゃない?って心の中で軽くツッコミを入れつつ…
急にどうしたんだろう?普段とは違うトーンで、突然、口を開いた亮真さんの言葉の意味が気になる…
そう思って、聞いてみた。
「えっ???どうしたの?」
「俺が死んでも誰も来てくれへん…」
お父様が亡くなって、何か思うところがあったのかも。
亮真さん、子供いないしね。
お父様の死を受けて、子供がいない今の状態に不安を感じちゃったのかな…
奥さまももう産める年齢じゃないし、本気だか冗談だか分からないけれど、フィリピンとかインドネシアとか、日本人男性の子供を妊娠したい女性は、沢山いるから、産んでもらおうかな…って言ってた。
いやいやいや…
あなたが言うと、あんまり冗談に聞こえないんですけど。
それに、今付き合ってる私に、その相談されても…
それって、他の女とやって、子供作るけど、それは子孫を残すためだから、文句言うなよ…的な?
っていうか、私はそれを聞いて、どうコメントしたら良かったのか。
「それに関しては、私は何も言えないよ…」
そう。何も言えない。
だって、私は亮真さんの子供を産むことが出来るわけじゃないから。
私が出来ないなら、海外で…と考えても仕方ないよね。
いや、だけどやっぱり、たとえ婚外恋愛だとしても、彼女に対して、「他の女性と子供を作りたい」っていうなんて、やっぱりこの人、普通じゃないよね…笑
半分以上は冗談だと思うけど、少なくとも、願望はあるんだと思う。この人、子供好きだし…
私は、年齢的にも、立場的にも、亮真さんの子供を産んであげることはできないしね!
私には子供がいるから、いない人の気持ち、わからない。
確かに、将来の事とか、老後の事とか、色々考えだしたら、不安になるのも分かる。
だから、私は、黙って聞いていることしか、出来なかった。
「レイナ、お前はどう思う?」
突然、私に意見を求められた…。
けど、答えられるわけないよね?
もちろん今すぐの話じゃないんだろうけど…。
数年後をイメージしての発言なんだろうし、その時私は亮真さんと付き合ってないかもしれないけど…、今は付き合ってるわけで…、その状態で、彼が子作りのために、外国人女性とセックスするのを、黙認しろって言われても、「うん、いいよ」とは、なかなか言えない。
不倫してるくせに、何言ってんだか…って感じだけども。笑
軽率なことは言えないなーと思いつつも、これだけは、言っておこう!と思ったことだけを伝える。
「亮真さんが外国人と子作りするなら、私は別れる。病気怖いし。いい気持ちはしないし、ヤキモチ妬かないと言ったらウソになるし。でも、本気で子供作りたいという理由だけで、そういうことするなら、奥さんと別れて、日本の若い奥さん貰えばいいじゃないの?」
って聞いたら、彼は、
「将来、海外に住みたいから、ビザ取るためにも、外国人と結婚した方がいいんだよなー」だって。
また、いつものように半分冗談なのかもしれないけど…笑
真剣に彼の悩みを聞いていた私、なんだか、バカみたい…と思い始めたんだけど、彼は彼なりに、お父様の死を目の当たりにして、自分の子供を見てみたいと思ったんだろうなと思って、そんな彼をそっとしておこうと、心に誓った。
まさか本当に、奥さんと離婚して、外国に住むために、若い外国人女性と再婚するとは思えないけどね。
その日の亮真さんは、なんかちょっと、いつもと違う気がした。
私に対しての、距離が近いというか…。
寄り添ってくる感じがすごく伝わってきて…。
なんか、すっごい愛しいと思っちゃいました♡
何よりも、お父様を亡くした悲しみに耽っている日の夜に、私に会いに来てくれたことが、彼の気持ちを象徴しているような気がした。
なんだか、そんな彼の行動が、すごく嬉しかったし、愛おしかったし、抱きしめてあげたかった。
駐車場からお店までの道のりも、手を繋いで歩いてくれたし、やっぱりなんかいつもと違う亮真さんだったのは間違いないと思う。
腕組みじゃなくて、手繋ぎ♡
私がしたかったやつ♡
彼の、私への気持ちとか、ひしひしと伝わってきて、もしかしたら、本当に亮真さんのことが好きになっちゃったかも♡
亮真さんのことが愛しくて仕方ない。
これね、健太郎とは違う感情かも。
母性かな。なんだろう。うん、多分、母性だね。甘え方が上手なんだと思う。いや、52歳のおじさんだけどね。笑
なんか、放っておけない人なの。
普段は意地悪ばっかり言うし、本気かどうかも分からない感じで、私のこと、からかってばっかりで…。
もっと、健太郎みたいに、好きとか愛してるとか、言って欲しいって思うけど…
でも、今は、彼と過ごす時間や、普通のデートしてる感じが、すごく楽しいし、幸せ♡
私がしたかったことを、彼は、叶えてくれてる♡
亮真さんとの楽しい時間は、あっという間で、閉店時間が近付いてきたので、駐車場へ向かう。
お店を出る時に、私、テーブルの足に躓いちゃって、足のすねを打って怪我した私を気遣って、亮真さんは、私の手を弾きながら、ゆっくり歩いてくれたの。
本当はもっと一緒にいたかったけどね。
彼が、「眠くなった―」って言ったので、解散。
そりゃそうだよね。今日は、日中仕事してて、そんな中、お父様の訃報を聞いて、車で他県にある実家まで車を飛ばして、お父様と対面して、長男として、役割を果たしてから、私に会いにきてくれているんだもん。
疲れているに決まってる。
家まで送って貰って、車を降りる時に、亮真さんが、私の顔を引き寄せて、別れ際に軽いキス。
「またねー♡」といって、彼は帰っていった…。
見送りながらも、彼の落ち込んだ気持ちを、少しでも癒せたのかなーって気になっちゃった。
亮真さんの弱みを、初めて見た気がする。
普段、完璧に鎧を着てて、自分の弱みを見せない人だから、こんな風に弱ってる姿を見せられちゃうと、気になっちゃうし、好きになっちゃうよね…
間違いなく、この日の出来事が、レイナが亮真さんに対して感じていた壁を取り除く出来事となったと思う。
亮真さんは、私のことを、必要としてくれてるのかなー
この人ともっと、一緒に時間を過ごせたらいいなーって、その時、心から思っちゃった。